登録販売者になったばかりの頃の私は、経験を積むことを、意図的に避けていました。
失敗するのが怖かったからです。
声をかけたら、何を聞かれるか分からない。
目の前でスマホを開くのも、なんだか気が引ける。
だから、困っていそうなお客様がいても、近づかないようにしていました。
あれから6年目。
今でも失敗はしますし、接客に正解はありません。
それでも今は、この相談の仕事にやりがいを感じています。
先日、2021年に書いていたノートと、今の接客振り返りシートを見比べる機会がありました。
同じ私なのに、声のかけ方も、調べ方も、人への頼り方も、ずいぶん違っていました。
この記事では、1年目の接客ノートと6年目のシートを比べて見えた変化を、まとめています。
今まさに、接客が怖いと感じている新人さんの、背中を押せたら嬉しいです。
新人の頃の私は、お客様から少し離れた場所に立っていた
売り場にお客様がいても、近寄れませんでした。
声をかけられない距離で、そっと見ているだけ。
どんな質問が来るのか、ビクビクしていました。
特に怖かったのは、病院の薬との飲み合わせを聞かれること。
この頃の気持ちは、5年間の流れとあわせて、こちらにまとめています。
👉50代未経験で登録販売者になって5年。辞めたい時期を越えて変わったこと

何を聞かれるんだろう。答えられなかったらどうしよう。
もちろん、勉強はしていました。 試験にも受かって、薬の知識も入れてきたつもりです。
でも、現場で聞かれることは、想定外のことばかり。
どんなに勉強しても、本の中の知識だけでは、目の前のお客様には届かない。
机の上で考えているだけでは、足りないんだと分かってきました。
そのころ、ある方の発信を見かけました。
知識だけでは、接客はできない。 失敗してもいいから、経験しないと変われない。
そんな趣旨の内容が、考えるきっかけになりました。
失敗が怖くて近寄らないのは、経験を積む機会も、自分で避けていたということ。
それに気づいたのが、最初に変わったきっかけでした。
1年目の振り返りは、社員さんに教わったことの書き写しでした
1年目の私は、接客のあとに、手書きのノートへ振り返りを書いていました。
お客様の様子と、自分が案内したこと。
そのあとに赤いペンで、社員さんに教わったことを書き足していました。
いわゆる、接客ノートです。
たとえば、やけどの相談を受けた日のこと。
私は社員さんに代わってもらい、あとから聞いた手順を、赤ペンでそのまま書き留めました。
まず冷やす。程度に合わせて薬を分ける。じゅくじゅくしていたら、別の薬。
ノートを今見返すと、そこにあるのは、ほとんどが「聞いたこと」だけ。
こういう提案もできたかも、という私の考えは、ほとんど書いてありません。
そもそも、自分の考えを書くという発想がなかったんです。
あの頃の私にとって、正解は「経験豊富な社員さんに聞いたこと」でした。
マニュアル通りにやることが正しいと思っていました。 今でも、それが間違いだったとは思いません。
6年目の私は、迷ったときに、迷わず聞けるようになった
ある日、病院の薬を飲んでいる年配の女性から、聞かれました。
「喉が痛いだけなのですが、総合感冒薬を買ってもいいですか?」
1年目の私が、いちばん怖かった質問です。
総合感冒薬は、いろいろな成分が入っています。
処方薬と重なる心配があるうえ、必要のない成分まで増えてしまいます。
だから、おすすめしませんでした。
喉の症状に絞った薬を、案内しました。
もちろん、迷ったときは、自分だけで決めません。
別の日、処方薬を飲んでいるお客様から、風邪薬との飲み合わせを聞かれました。
このときは、自分で判断せず、その場で薬剤師さんに確認しました。
「一緒に飲んでも大丈夫」という返事をもらってから、お客様にお伝えしました。
分からないことは、迷わず聞く。 そう判断できるようになったのも、経験を積んだからだと思います。
1年目に「机上の空論」だと感じた知識が、経験の中で、少しずつ、お客様の前で使えるようになってきました。
そんな実感がありました。
お客様の前でスマホを開くことにも、抵抗がなくなった
1年目の私は、お客様の前で調べることが、苦手でした。
頼りなく見えそう。 お客様を不安にさせてしまうかもしれない。 勉強不足だと思われそう。
だから、分からないことがあると、調べずに社員さんに聞きに走っていました。

調べていたら、頼りなく見えるかな。
今は、まずスマホで、商品の画像や成分を調べます。
先日、外用の鎮痛薬を探しているお客様がいました。
お客様が持っていたのは、チューブの写真だけ。
売場で探しても見つからず、その場で検索してみると、パッケージが分かって、売場には置いていないと分かりました。
同じ商品が欲しいとのことだったので、別の商品を無理におすすめすることはしなかったんです。
その日は、お客様も購入を見送りました。
気になって、ポケットマニュアルで、外用の鎮痛成分の違いを調べてみました。
鎮痛成分は、「強い・弱い」だけでは決められないことが分かりました。
この本のレビューは、こちらにまとめています。
👉【現役レビュー】OTC薬ポケットマニュアルは買うべき?登録販売者が選んだ理由と他書との違い
聞いたことを書き写すのではなく、自分で調べて、自分の理解にする。
1年目のノートには、なかった動きです。
商品名を言われても、検索してみないと分からないことは、たくさんあります。
画像をお客様に見てもらいながら確認できるので、社員さんに聞きに行くより、早く済むこともあります。
無理には声をかけない。でも、困っていそうな人には、様子を見て近づく
声かけについては、以前の記事にも書きましたが、今の私の考えを一言だけ。
👉50代未経験で登録販売者になって5年。辞めたい時期を越えて変わったこと
昔は「声をかけなきゃ」という義務感で、お客様を見るたびに、葛藤していました。
今は、無理に声はかけません。
でも、困っていそうな人、声をかけたそうにしている人には、聞いてほしそうかどうか、少し様子を見てから、近づきます。
以前の私なら、怖くて、そっと離れていたかもしれない。
でも、今は、様子を見たうえで、迷わず近づいています。
今も、失敗はします。正解も、ありません
ある日、漢方薬を手にしたお客様から、「錠剤はないですか?」と聞かれました。
錠剤の候補は、2つ。
どちらも、商品名だけでは、漢方薬だと分かりにくい商品でした。
成分を見ながら、「同じ処方ですよ」とお伝えしたのですが、実は別の処方でした。
それに気づいたのは、接客のあとの振り返りで、AIに指摘されたときです。
幸い、お客様が選んだのは、もともと欲しかった処方のほうでした。
でも、これは、結果的にセーフだっただけです。
お客様の欲しいものを聞き出して、最終的には、選んでもらう。
それがベストだと思っています。
でも、そのあと満足してくださったのかは、分かりません。
だから、正解が分からないんです。
今でも、怖い時はあります。
ただ、1年目の怖さとは、違います。
怖さはあっても、逃げなくなりました。
怖くても、聞いたり、調べたりできます。
これまでの経験が、後押ししてくれているのかもしれません。
そして、この相談の仕事が、好きです。
不安そうだったお客様が、お話を聞くうちに、少しホッとされる。
最後に「忙しいのにごめんなさいね、ありがとう」と言ってもらえると、とても嬉しいです。
新人さんへ。簡単でいいので、振り返りをしてみてください
最初は、怖いし、不安ですよね。
私もそうでした。
失敗が怖くて、経験を積むことを避けていた私が、少しずつ変われたのは、経験したあとに、振り返ることを続けたからだと思います。
接客ノートは、登録販売者向けの本やサイトでも、すすめられているようです。
振り返りは、簡単でかまいません。
メモ1行でも、十分です。
たとえば、この3つだけ。
- お客様の言葉
- 私の対応
- 次は、こうしてみたい
書くことは、アウトプットにもなります。
接客を思い出して、言葉にする。
それだけで、覚えたことを使う練習になります。
私自身も、完璧にはできていません。
AIが出してくれた「次回改善点」を読んで、満足してしまっていた時期もありました。
今は、PCに入力して、シートにしています。
見やすいし、AIに質問するときも、そのまま貼れて便利なんです。
もちろん、お客様の名前など、個人が特定される情報は入れていません。
接客の内容をAIに話して、整理してもらったり、別の提案を出してもらったりしています。
でも、そのまま信じるのではなく、おかしいと思ったことは自分でも調べます。
店長や薬剤師さんにも確認して、自分の思いと一致したものだけを、記録に残しています。
AIを使った振り返りのやり方と、接客での失敗例は、こちらにまとめています。
👉登録販売者試験 合格後は何を勉強する?50代未経験の学び直し実践法
【まとめ】1年目と6年目の私
| 1年目 | 6年目 | |
|---|---|---|
| 売場 | 近寄れなかった | 困っていそうな人には、様子を見て近づく |
| 調べ方 | すぐ社員さんに聞きに走る | まずスマホで調べる。分からなければ、迷わず聞く |
| 振り返り | 手書きのノートに、聞いたことを書き写す | PCのシートに入力して、聞いて、調べて、自分の理解にする |
失敗もするし、正解もありません。
それでも、経験しないと、変われませんでした。
人と比べず、自分の軸で成長が感じられると、それがモチベーションになります。
失敗することが怖かった私は、なかなか前に進めませんでした。
でも、失敗せずに成長するなんて、無理だと気づいたんです。
最初は、60点でいい。 それを少しずつ70点、80点に近づけるように、経験をコツコツ積んでいくことが、自信につながると、今は思っています。
実は以前にも、信頼している薬剤師さんに、「最低限の60点からの上積みができれば良い」と言ってもらったことがありました。
そのときは、ただ受け取るだけで、すっかり忘れていたのに。
今、自分の言葉として、同じことを言っている。
やっと、その意味が分かってきたのかもしれません。
最初は怖くて、当たり前。
様子を見て、少しだけ近づいて、簡単でいいので、振り返ってみてくださいね。
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