「さあ、今日も頑張ろう」
朝、店の制服に着替えながら、そう思える日が増えました。
今日はどんなお客様が来るかな。
どんな接客があるかな。
少しだけ、ワクワクしている自分がいます。
——でも、5年前の朝の私は、こうじゃありませんでした。
「私、続けられるのかな」
「接客って、怖いな」
「未知の世界。どうなるんだろう」
50代未経験で登録販売者になったばかりの頃、毎朝、不安と必死さでいっぱいでした。
あれから5年。
2026年で、6年目に入りました。
辞めようと思ったこともあります。
自信なんて全然なくて、もう無理だと思ったことは数え切れません。
何度も、立ち止まりながらの5年でした。
でも、今はこう思っています。
辞めなくて良かった、と。
「いつでも辞められる。でも、今はここで働きたい」
そう自分で選べていることが、5年前との何よりの違いです。
この記事では、5年続けてみてわかったこと、そして今だから言える「続ける・辞める・調整する」のリアルを、正直に書いていきます。
同じように悩んでいる誰かに、何か届けばうれしいです。
【1年目〜2年目】何もわからなかった私
5年前、私はあるドラッグストアで、登録販売者としてのパート勤務を始めました。
お客として何度か行ったことのあるお店だったのですが、「従業員として」働くとなると、見える景色はまるで違うんですよね。
採用までの道のりは、こちらの記事にまとめています。
👉50代・未経験でも諦めない!登録販売者として6社面接して掴んだ採用のポイント
初出勤の日、ぐっと気が引き締まった
初出勤の朝、店に入った瞬間、気がぐっと引き締まりました。
「いよいよ、ここで働くんだ」と。
1日中、緊張しっぱなし。
パートの仲間はどんな人だろう。
今日会えていない人は何人いるんだろう。
ベテランさんに迷惑をかけないように、ちゃんとやれるかな…。
帰り道、こう思ったのを覚えています。
「うわー、初日から前途多難。やっていけるかな」
特に気がかりだったのは、人間関係。
小さなことなのですが、挨拶があまり返ってこない方もいらして、初日の私には、それがちょっと引っかかりました。
接客が、毎日怖かった
接客も、毎日が怖かったです。
登録販売者の資格は取ったけれど、現場では知らないことだらけ。
「これ、病院でもらっている薬と一緒に飲んでも大丈夫?」
お客様からこう聞かれるのが、一番怖かったんです。
答えられないと、お客様の体に関わってしまうかもしれない。
わからないことは、すぐに社員さんに聞きに行きました。
「お客様を待たせてはいけない」という気持ちが強すぎて、症状をちゃんと聞き取る前に、もう走って聞きに行ってしまうほど。
今思えば、まず落ち着いて聞き取れればよかったんですが、当時の私は、それすらできていませんでした。
半額のうどんで、お客様を待たせてしまった日
失敗エピソードで、今も忘れられないものがあります。
レジで会計をしていたら、お客様が買おうとしていたうどんは複数個でした。
そのまま会計を済ませたのですが、重なっていた2番目のうどんだけが半額だったんです。
それなのにうどん×個数で通常金額で通してしまいました。
会計が終わったあと、お客様に指摘されて、社員を呼んで返金対応。
お客様を待たせてしまったこと、社員さんにも手間をおかけしてしまったこと。
帰り道、ずっと胸が重かったのを覚えています。
それ以来、レジでは「ひとつずつ、確認」が、私の必須項目になりました。
他にも失敗だらけだった頃の話は、こちらに書いています。
👉50代未経験で登録販売者になった私。最初の1か月は失敗だらけでした
「辞めようかな」と、何度も思った
2年目の途中、本気で辞めようかと思ったことがあります。
それは採用してくれた店長が、転勤になった頃でした。
新しく来た店長と、考え方がうまく噛み合わなくて。
前の店長は、推奨販売にそこまで力を入れる方ではなかったのですが、新しい店長は「当たって砕けろ」のスタンス。
方針がガラッとかわってしまって、私にとってそれはとても重く感じられました。
「もう辞めようかな」
そう思った回数は、数え切れません。
それでも辞めなかった、たった一つの理由
でも、辞められなかった理由が、一つだけありました。
「ここで辞めたら、せっかく取った資格の意味がなくなる」
実務経験を積み終わるまでは、何があっても辞めない。
そう自分に言い聞かせて、気合いだけで、毎日通っていました。
何もわからないまま、必死で、なんとか1日、1日を積み重ねていく。
振り返ってみると、最初の2年間は、そんな日々でした。
【3年目】やっと「登録販売者」になれた頃
実務経験を積み終わるまでは、何があっても辞めない。
そう自分に言い聞かせて始まった毎日。
気がつけば、いつの間にか2年目が終わろうとしていました。
実は私、達成日が来るのを「自分で」計算していました。
1920時間、それは登録販売者として正式に「管理者要件」を満たすために必要な時間数のこと。
当時の私にとって、1920時間は「研修中」を卒業するための大きな目標でした。
月ごとにシフトを足し算しながら、「あと何時間、あと何時間」と進捗を見ていたんです。
実は、この時間のカウントの仕方は、会社によって違うんです。
医薬品の接客時間だけをカウントするところもあれば、シフト時間すべてをカウントしてくれるところもある。
私が働いている会社は、後者です。
(※管理者要件の詳細は制度改正があるため、現在の条件は厚生労働省や勤務先でご確認ください。)
1920時間の話は、こちらの記事に詳しく書いています。
👉登録販売者の実務経験・従事時間】50代パートが1920時間を積み上げて感じたリアル
ようやく、その日が来た
そしてある月、ついに達成。
「これで、ようやく転職の幅が広がる」
それが、達成した瞬間に、私の頭をよぎった最初の言葉でした。
求人を見ていると、「管理者要件を満たしている方」という条件をよく見かけます。
1920時間を達成していないと、応募できる範囲が一気に狭まる。
だから、達成日が来た瞬間、世界がぐっと広がった感覚があったんです。
家に帰って、私はただ充実感に浸っていました。
「やり遂げた」「これで、次のステージに進める」
そんな静かな満足感を、心の中でかみしめた1日でした。
ところが——。
翌日、出勤しても、何も変わりませんでした。
店長や社員からの労いの言葉があるわけでもない
当時の店長は、私の節目をあまり気にされていない様子で、そして働く上でも、特に変化はなかったんです。
私自身がただ自己満足しただけで、日々が過ぎていきました。
名札も、しばらくそのまま。
「研修中」という文字が、ずっと残ったままでした。
最初は「研修中」のままでも、ちょっと都合よく感じていた部分もあったんです。
まだ自信もなかったし、お客様から「新人なんだ」と思ってもらえる方が、気持ち的にも楽だったから。
でも、これは私から言わない限り、一生このままなんじゃないか…。
そう気づいて、ある日、思い切って言いやすい社員さんに「名札、新しいものを作ってもらえませんか」とお願いしました。
そうして「研修中」が外れた名札を手にしたとき。
私はようやく、自分で、自分を登録販売者として認めてあげた気がしたんです。
もう一歩、踏み出してみよう
それでも、私の周りでは、誰も特別なことだとは思っていない様子でした。
私の中では大きな節目だったのに、職場では昨日と同じ日常。
その温度差が、少し寂しく感じました。
「達成しても、誰も気づいてくれない」
「ここでは、私が登録販売者になったことは、周りにとっては特別なことじゃないんだ」
そう感じる時間が増えていきました。
何かが大きく変わったわけじゃない。
でも、私の中で、少しずつ気持ちが動き始めていたんです。
「ここで認められないなら、他の場所はどうなんだろう」
「もっと違う世界も、見てみたい」
達成感は、私を満足させてくれただけじゃありませんでした。
私の背中を、そっと押してくれていたんです。
「ここまで来られた自分なら、もう一歩、踏み出してみてもいいかも」
そう思って動き出した3年目の始め。
それが、私の長い「迷いの2年間」の入り口になるなんて、その時はまだ知りませんでした。
【3年目〜4年目】一番しんどかった2年間
達成感に背中を押されて、動き出した3年目の始め。
でも、ここからの2年間は、振り返ってみると私の中で一番しんどい時期でした。
「もっと違う世界を見てみたい」
そう思って踏み出した先に、いくつもの試練が待っていたんです。
物流の世界で、登録販売者のはずだったのに
最初の挑戦は、物流業の会社でした。
「登録販売者募集」の求人に応募したものの、実際は出荷作業が中心。
私が思い描いていたOTC医薬品の世界とは、まったく違っていました。
さらに、契約更新時に提示された条件が、面接で聞いていた話と違っていて——「これは、ダメだ」。
1日考えて、私は自分の言葉で退職の意向を伝えました。
入社からわずか2ヶ月、私の最初の挑戦は、そこで終わりました。
この経験から学んだのは、「求人票だけでは、本当の働き方はわからない」ということでした。
このときのことは、3回に分けて記事にまとめています。
👉パート退職をあっさり済ませた50代の体験談。後悔ゼロで辞められた理由【ブラック企業実話・中編】
もう登録販売者を、引退しようかなと思った
物流業を辞めたあと、私はしばらく考えました。
「もう、登録販売者の仕事自体を、引退しようかな」
ドラッグストアでの人間関係、接客、それまでに溜まっていた疲れ。
気持ちが、しょぼんと、しぼんでしまっていたんです。
そこから、私は登録販売者とは違う世界へ、もう一度踏み出すことにしました。
最初に選んだのは、経験のある介護事務。
仕事内容は、自分に合っていて楽しかった。
けれど、通勤が遠かったことと、事業所の中の空気がギスギスしていて、長くは続けられませんでした。
次に挑戦したのが、医療事務。
資格を活かしたい気持ちもあって、2度挑戦して、今の訪問診療クリニックに着地しています。
気がつけば、ドラッグストアと並行して、私は掛け持ちを4回も転々としていました。
医療事務をめぐる紆余曲折は、こちらの記事にまとめています。
👉50代で医療事務は難しい?6ヶ月で辞めた私が感じたリアルと3つの気づき
シフトトラブルで、居場所がなくなった気がした日
3年目の終わり頃、私の中で「辞めたい」という気持ちが、一番ピークになった出来事がありました。
シフトのことで、ちょっとした出来事があったんです。
詳しくは書けないのですが、自分の居場所が、ふっとなくなったように感じた日のことでした。
店長とも、考え方がもともと噛み合わない部分があって、その上での出来事。
「もう、限界かもしれない」
その時の私は、本気でそう思っていました。
ドラッグストアの仕事を辞めて、医療事務だけにしてしまおうか。
それとも、もう全部やめてしまおうか。
夜、なかなか眠れない日もありました。
でも、掛け持ちが教えてくれたこと
そんな2年間でしたが、今振り返ってみると、この掛け持ちの時期があったからこそ、見えてきたものがあります。
介護事務も、医療事務も、私にとっては仕事内容として悪くありませんでした。
でも、一つだけ、ずっとどこかで違和感を抱えていたんです。
私が働いた職場では、患者さんから見れば「受付の人」という立場で、クレームを最初に受けることも多く、仕事の手応えを感じにくかったんです。
一方で、登録販売者の仕事は、お客様の困りごとを直接伺って、話を聞きながら一緒に考える仕事。
ときには、話を聞いただけで「ありがとう」と言ってもらえる。
この「ありがとう」が、私が仕事を続ける上で、一番のモチベーションだったんだと、他の仕事を経験して、初めて気づきました。
そしてもう一つ。
完璧な職場なんて、どこにもないということ。
掛け持ちを4回も転々として、私が一番強く感じたのは、それでした。
どこへ行っても、嫌なことはあります。
価値観の合わない人もいる。
でも、長く働くということは、その中で「合う人」を見つけて、信頼関係を築いていくこと。
ドラッグストアにも、合わない人はいます。
でも、合う人がいる。
愚痴を言い合える仲間がいる。
その心地よさを、私は他の場所で働いてみて、改めて感じることができたんです。
「ここを離れたい」と思って踏み出した道が、結局は「ここに戻ろう」と気づかせてくれた。
3年目の始めに動き出して、4年目の終わりにピークがあって。
気がつけば、私は、ドラッグストアの登録販売者の仕事に、気持ちがもう一度戻ってきていました。
ここからが、5年目の話です。
【5年目に入って】「無理して頑張らない」と決めた
「実務経験を積み終わるまでは辞めない」と気合いで走った1年目。
「自分で、自分を認めてあげた」名札を手にした3年目。
そして、迷いと試練の2年間を経て、気がつけば、5年目に入っていました。
ここから、私の中で、何かが少しずつ変わり始めたんです。
学びが、私を変えた
ちょうどその頃、私は放送大学やオンラインサロンで、職場のストレス対策について学び始めていました。
そこで出会ったのが、「視点ずらし」という考え方です。
(視点ずらしは私がそう呼んでいるだけで、実際の名前は違います)
例えば、「失敗したらどうしよう」と思ったとき。
昔の私は、ただ怖がるしかありませんでした。
でも今は、こう思えるようになったんです。
「致命傷さえ避ければ、それは学びになる」と。
「こうあるべき」と思い込んでいたものを、「こういう考えもあるよね」に変えていく。
たったそれだけのことで、心がふっと軽くなるんです。
学んだ「整え方」の話は、こちらに書いています。
👉職場ストレスに悩んだ50代主婦の実践録|辞めずに働く接客と人間関係の整え方
理不尽なお客様に怒鳴られた日も、心の中でこう思えるようになりました。
「この方も、思い通りにならなくて余裕がないのかもしれない」
そう一歩引いて考えると、必要以上に引きずらなくなりました。
仕事をマイペースで進めるタイプの同僚にも、もう振り回されません。
「この人の考えは変わらない。なら、私自身の考え方を変えよう」
私は、私の仕事を丁寧にこなすだけ。
そう決めたら、相手を変えようとするエネルギーが、分散されるんです。
シフトが激減してしまった時期も、こう受け止めました。
「以前と同じ時間働けていたら、ストレスも倍になっていたかもしれない。今のシフトが、ちょうど心地いいのかも」
当時の店長に対しても、悪い面ばかり見ていた頃の私から、少しずつ変わっていきました。
薬のことで相談すると、ちゃんと調べて答えてくれる。
「きっと、人に教えるのが好きな人なんだろうな」
そう思えるようになったら、苦手意識が、少しずつ和らいでいったんです。
お客様への向き合い方も、変わった
5年経つと、お客様への向き合い方も、自然と変わってきました。
たとえば、お声がけ。
昔は「とにかく声をかけなきゃ」と必死でしたが、今は無理して声をかけません。
お客様がじっくり商品を選びたい雰囲気のときは、そっと引く。
逆に、キョロキョロして何かを探していそうな方には、自分から「何かお探しですか?」と声をかける。
商品選びで迷っているお客様の近くで、納品や前出しをして、いつでも声をかけられる距離にいる。
5年経ったから、できるようになったこと。
自分が成長していくことを、今は楽しめるようになりました。
「いつでも辞められる」と、「今ここでいい」が同居している
そして、自分の中で、不思議な感覚が生まれています。
「いつでも辞めていい」という感覚と、「とりあえず今は、ここでいい」という納得感が、同じ私の中に同居しているんです。
50代になると、年齢を理由に我慢してしまうことが、どうしてもあります。
「次なんて、見つからないかも」「もうこの歳じゃ無理かな」と。
でも、5年やってみてわかったんです。
確率は下がっても、転職が不可能というわけではないということ。
そして何より、資格を持っているということ。
これは、気持ち的にとても大きな支えになっています。
「いつでも辞めようと思えば辞められる。でも、今はここで働きたい」
そう自分で選べている感覚が、私の肩の力を、すっと抜いてくれたんです。
まとめ:続ける・辞める・調整する。答えは一つじゃない
5年振り返ってみて、思うこと。
何度も「辞めようかな」と思いました。
辞めても、よかったんです。
でも、辞められなかった。
そして今は、辞めなくて良かったと思っています。
もし辞めていたら、たぶん「中途半端のまま」終わったことを、ずっと後悔していたから。
でも、これは私のケースです。
「登録販売者の仕事、そんなにきついの?」
「5年経ってもしんどいの?」
そう思っている方がいたら、そうじゃなくて、あくまで私の経験です。
働き始めたばかりで悩んでいる方には、まず一言。
無理して頑張りすぎないでください。
経験値は、必ずあとから自分を楽にしてくれます。
これから資格を取ろうか迷っている方には、こんな選択肢もあります。
まずは資格だけ取って、使うかどうかは寝かせてもいい。
私自身、資格を取ってから2年寝かせていました。
使わなかったとしても、50代で資格を取れたことは、間違いなく自分の自信になります。
そして今、続けるか辞めるかで揺れている方へ。
ゆる〜く続けて、気持ちを分散させてもいい。
勤務時間を短くして、一度冷静になるのもあり。
一旦辞めて、戻りたくなったら戻るのも、立派な選択です。
続ける・辞める・調整する。
どれが正解、ということはないと、私は思います。
ただ一つだけ言えるのは——
自分の人生の主導権は、いつだって、自分の手の中にあるということ。
5年やってきて、私はそれを、ようやく実感できるようになりました。
明日もまた、「さあ、今日も頑張ろう」と思って、私はお店に向かいます。
「辞めたい」「続けられるかな」と迷っているあなたに、この記事が何か一つでも、お役に立てたらうれしいです。
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